年金記録訂正でうけとった年金を返さねばならない? 3号未納問題

社会保険労務士 高橋裕典先生

緊急インタビュー

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村瀬:高橋先生。今日はよろしくお願いいたします。

高橋:よろしくお願いいたします。

村瀬:今日は年金記録訂正後の問題について、ご解説をお願いいたします。まず僕の方からニュースをご紹介させていただきます。7月1日7時57分配信のヤフーニュースです。

引用: 『年金記録問題で、年金受給者の専業主婦が記録訂正した結果、過去の保険料納付期間が未納扱いになり、すでに受け取った年金の返納を求められているケースがある。

 年金返納を求められているのは、年金受給開始前に会社員の夫の扶養を受けていた専業主婦ら(第3号被保険者)の一部。専業主婦らが過去の勤務実績をもとに厚生年金の記録を復活させた場合、「退社後に第3号被保険者の届け出がない」とされるケースがあった。この場合は退社後の期間が未納扱いとなってしまい、すでに年金を受け取っていると、返納しなければいけなくなる。 』(一部読み間違いによる改変)

ちょっとむずかしいニュースですけれども。

高橋:そうですね。今回このような話を初めて聞いたよ、という方も多くいらっしゃるかもわからないんですけれども、年金関係の仕事をしている間では、これを3号未納の問題といって、ずっと問題視をしていたんですね。

 国民年金の第3号被保険者というのは、感覚的には旦那様の扶養家族という形になっていると、その間奥さんがちょっとパートに出たと、そこに厚生年金の加入期間だったとすると、本来は国民年金の被保険者期間というのは3種類あるんですね。第1号、第2号、第3号ということでね。それぞれ第1号、第2号、第3号、変わるときに手続きをとらないといけないんですね。
 そして、今回のケースもやはり第3号被保険者であった期間の間に厚生年金に加入していたということになると国民年金の第2号被保険者という扱いになるんですね。第3号から第2号に変わる時は、いわゆる就職の手続きとして、会社がやってくれるわけなんですね。ただその会社、厚生年金を辞めた後、第3号被保険者に戻るためには、別途手続きを取らなくてはならない。ここが漏れているとその後の第3号被保険者の期間が手続き漏れという事で未納の扱いになってしまうんですね。  

 
 今、図を見ていただいているかと思うんですけれども、妻の年金記録調査中の間は、まだお勤めの記録だったところがわからないわけですので、夫、厚生年金Aの会社ということで厚生年金に入っていました。そうすると、妻、奥さん、扶養に入っているAの会社に勤めている旦那さんの国民年金第3号の被保険者という形で扶養に入っているわけですね。それが妻の年金記録が判明したらどうなるのか。ということですね。妻自身が厚生年金の資格を喪失した際、退社した際と読み替えていただければわかりやすいと思いますけれども、この時に第3号被保険者に戻る手続きをしないといけないと、そしてこれが漏れているわけなんですね。そしてこの訂正の届け出をさかのぼって行うことができるんですけれども、そのさかのぼって行う手続き、3号特例と呼ばれているものですね。この3号特例は、その申し出をしたときに初めて納付したこととして扱われるようになりますので、一旦手続き漏れということで未納扱いになり、特例の申し出をした段階で、納付の記録として復活するというような、今現在の法律の仕組みになっているわけなんですね。このような形で、このニュースの原因になる部分なんですね。

 

 それともうひとつ、第3号被保険者にかかるいわゆる3号未納のケースとしては、ご主人さん、夫が会社を転職したと、これが比較的短い期間の転職の場合も中にはありますよね。Aの会社を退職して、次Bの会社、厚生年金に移る際に、転職期間が1週間ぐらいあいていたよ。その際奥さんは、扶養に入っている間の保険証など特段問題はなかったので、ずっと自分は扶養に入っているんだと思っていたわけですけれども、厳密に言うと、ご主人さんが一回厚生年金を辞めた段階で、妻側も国民年金第3号被保険者の資格を切る手続きをしなければいけないんですね。そして夫が再就職したところで、再度国民年金の第3号に入る手続きが必要になると。今お話ししたのが、誤った状態というところですね。夫、厚生年金AとB、ということで途中転職期間があります。そして妻、国民年金第3号に入りっぱなしになっちゃってたんですね。切り替え手続きをとっていない、と。
では、正しい状態に直しましょう。ということで、下の図を見ていただくと、今度は夫、国民年金の第3号の(A)と書いてあります。そして転職期間は、夫側も厚生年金に入っていませんので、妻は国民年金の第1号被保険者ということになるわけですね。そして夫が厚生年金B、Bの会社にお勤めが始まった段階で、本来は、妻は国民年金第3号の手続きを取らなければいけなかった。ここもやっぱりさかのぼって第3号の被保険者の手続きをとれる3号特例というのがあります。
 ここも先ほどと同じように、いったん未納として取り扱われて、特例の申し出をした段階で記録が復活してくるという流れなんですね。
 こういった問題がいわゆる3号特例、3号未納という形で問題になっていたわけですね。

 たとえば、年金受給されている方にこの3号未納というのが見つかってしまうと、たとえば、60歳から年金を受給している方が、63歳でこの3号未納がわかりました、ということになると、3年間年金を受給されているわけですよね。その受給している額、これは、本来未納になっている部分をもらっていることになるので、返してくださいね、ということになるわけですね。
 場合によっては、ここの3号未納と呼ばれる部分が未納扱いになってしまうと、25年納めなければいけませんよといった条件を、クリアーできない方も出てくると、そういう場合には、全額そこまで受給した年金を返して下さいね、ということにもなってくるわけなんですね。

 そして、ここの点がこれは法制度の不備があるんではないかということで、民主党の議員立法でこの改正案を国会に出していくというような方向になっていくようでございますので、今後改善が図られる可能性も十分あるかとは思いますけれども、ひとつ皆様、年金の記録の確認、国民年金の第3号被保険者である方、途中にお勤めがないかどうか、逆に夫の転職がはさまってないだろうか、というあたりをひとつポイントに、再度記録の確認を年金受給開始年齢前にしていただくということが、最大の防衛策ということになりますので、ひとつ注意をして、今後のご自身の年金記録を管理していっていただきたいと、私は思います。

村瀬:3号から1号に移る時は自動なのに、1号から3号に戻る時は自動じゃなくて届け出をしなければいけなかったということを、誰も教えてくれなくて、こういう悲劇が起こるんですよね。これはやっぱり法律的な不備という感じがしますよね。

高橋::そうですね。はい。
 ただ、手続きをすべきところを会社にしているんですね。第3号さんは。なので、第3号被保険者にかかるものは、本来会社がするんですけれども、その会社もやはり前のお勤めの記録のところまで把握しろというのは、やはり無理がある部分もどうしてもあるというので、法的な不備については否めない部分かなと、国の方できちんと記録の方がわかっているんであれば、あらかじめ案内をしてあげるというようなサービスがあってもいいんではないか、という風には思うんですけれども、ここも本当に社会保険庁のコンピュータの記録を見てみないとわからない事がほとんどでございますので、今後この辺も改正すべき点としては上がってくるでしょうね。

村瀬:社会保険庁の方も、実は途中で1号になった期間があったとかいう事を確認しないまま、この人はずっと3号のままだということで、お金を払っちゃってるとかしてるわけですよね。

高橋::そうですね。本来、年金の受給の際には、この3号未納が発生していないことを確認することになっているんですね。
 ただ、確認漏れが現実に起こっているというところから、このような事態が生まれてくるということもありますので。あとは、やはりどうしても年金の請求の審査をした段階では、お勤めの記録が見つからなかった方もいらっしゃるわけなんですよね。
後から見つかったことによって、この3号未納というのが発生してしまうケースがありますので、一概に人的ミスによる返納とういうことにはならない部分もあるんですね。そこがちょっと国民の皆様は、わかりづらいところで、誤解が生まれていることもあるんですが、突き詰めていくと、法的に不備な点が多いのかなと考えられるんではないでしょうかね。

村瀬:そうですよね。届出をしなければならなかったということ自体も知らないですよね。

高橋::そうなんですよね。おっしゃるとおりです。

村瀬:誰も教えてくれなかったですから。

高橋::おっしゃるとおりです。
 ここは今現在、年金に関しては申請主義という形で、法律がそういうスタンスをとっていますので、この辺も国の職権でできるようになっていくような形になれば、多少、こういう落とし穴に落ちちゃう方が減ってはくると思うんですね。でもなかなか個人の記録にどこまで介入するかというところも、やはりありますので、むずかしい問題ではあると思うんですね。

  村瀬:ありがとうございました。

高橋:また何かありましたらいつでもお呼び立てください。

   

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